多発性嚢胞腎
- メンバー
- 武藤 智

多発性嚢胞腎ADPKD の85%は16p13.3 に位置する遺伝子PKD1 の異常により発症し、15%は4q21-23 に位置する遺伝子PKD2 の異常によります。PKD1 遺伝子の遺伝子産物であるPolycystin-1 は腎尿細管細胞では細胞膜にβ -catenin やE-cadherin などの接着因子と結合して局在していることが報告されています。われわれはマウスのortholog であるPkd1 遺伝子exon2 以下のノックアウトマウスを初めて作成し解析してきました。
a. 多発性嚢胞腎のBiomarker 探索研究
尿中クレアチニンは腎機能の評価項目として確立し、多発性嚢胞腎患者においても日常診療でよく使われていますが、尿中クレアチニン値と嚢胞による腎容積の増大は必ずしも相関するとは限りません。多発性嚢胞腎患者にとっては腎不全の進行と嚢胞の巨大化は、患者様の生命予後とQOL を規定する臨床的に非常に大きな問題ですが、病態を反映したマーカーはありません。個々の患者様ではクレアチニンが上昇し始めるまで腎不全の進行はわかりませんし、腹部膨満感が出現しなければ嚢胞が巨大化していることすらわからないのが現状です。そこで、多発性嚢胞腎患者の尿および血液を採取し、原因遺伝子であるPKD1 の遺伝子産物Polycistin1 および、他の関連蛋白発現量を測定し尿中クレアチニン値と比較することによって、多発性嚢胞腎の病態の臨床的に反映したマーカーの探索を行っています。
b. 多発性嚢胞腎とsuperoxide
様々な生物反応や外的ストレスで過剰に産生された superoxide はDNA に障害を与えるため、生体内では速
やかに消去する機構が必要とされています。生体に備わった唯一のsuperoxide を消去する機構として考えられているのがSuperoxide dismutase(SOD)です。SOD は、Superoxide と水素イオンから過酸化水素と酸素をつくる反応を触媒する酵素で、ヒトでは細胞質にある銅と亜鉛を含むSOD1、mitochondria にあるマンガンを含むSOD2、さ
らに細胞外に存在するextracellular SOD の3種のSODが知られています。多発性嚢胞腎は遺伝疾患ではありますが、同一家系内でも表現型と予後の個体差が大きいのが特徴です。つまりその表現型には、責任遺伝子であるPKD1 の異常だけではなく何らかの修飾因子が関与している可能性が考えられます。そこでわれわれはPkd1 とSod1 のダブルノックアウトマウスを作成し、その嚢胞発生等の表現型を検討しています。




