前立腺癌に対する内分泌療法
前立腺癌細胞は男性ホルモン(アンドロゲン)依存的に増殖します。したがって、男性ホルモンのシグナル伝達系を様々なレベルで抑制する治療戦略が前立腺癌に用いられています(図参照)。最近の報告では、限局性前立腺癌の場合、ホルモン療法単独でも手術療法を含めた他の治療方法と較べ、同レベルの5 年生存率が得られています。しかし、男性ホルモンを遮断するため、動脈硬化、高血圧、糖尿病が進行することが多く、また骨密度が低下します。したがって限局性の前立腺癌に対しては、手術療法やHIFU が第一選択となることが多いです。放射線治療ではホルモン療法を併用することが一般的です。一方、骨転移やリンパ節転移を伴う進行期前立腺癌の場合には、ホルモン療法が行われます。しかし、その多くは治療の過程でホルモン療法不応性になります。当院では、ホルモン療法不応性前立腺癌にも積極的な集学的治療を行っています。

(参考文献: Endocrine-Related Cancer. Scher H.l. et.al., 11, p459-476, 2004 を一部改変)
ホルモン療法の種類
a. LH-RH アナログ療法
LH-RH アゴニストを投与することにより、視床下部-下垂体レベルで性腺刺激ホルモン(LH、FSH)の分泌を抑制し、男性ホルモンの血中濃度を除睾レベルまで下げることができます。
b. 抗アンドロゲン剤
アンドロゲンとその受容体の結合に拮抗し、前立腺癌の増殖を抑制します。ステロイド性抗アンドロゲン薬と非ステロイド性抗アンドロゲン薬があります。
c. 除睾術
男性ホルモンを産生する精巣を両側ともに摘除する手術療法です。最近は行われません。
d. ステロイド投与
ステロイドホルモンを投与することにより、副腎由来の男性ホルモンの分泌を抑制します。ホルモン療法不応性前腺癌の治療に用いられます。
e. 5 α -reductase 阻害薬
テストステロンをより活性の強いデハイドロテストステロン に変換する酵素、5α -reductase を阻害する様々や薬剤が開発されてきています。
f. エストロゲン製剤
中枢からのゴナドトロピン分泌抑制作用の他に、男性ホルモン合成阻害、5α -reductase 阻害作用も併せ持ちます。
エストラサイト(リン酸エストラムスチン)はこれらの作用のほかに、前立腺癌細胞におけるマイクロチューブル重合阻害を介した殺細胞効果もみられます。
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堀江 重郎
井手 久満


