鏡視下手術(内視鏡・腹腔鏡)
胃や腸がある空間を腹腔(ふくくう)といいますが、副腎、腎臓、尿管、膀胱、前立腺は腹腔の後ろ側にあることから後腹膜腔(こうふくまくくう)にあるといわれます。泌尿器科で扱う臓器のうち、副腎、腎臓、尿管、膀胱、前立腺はからだの奥にあります。そのため開腹にて手術を行うと創部が大きく、手術は成功しても手術後の傷の痛みや筋肉の損傷、萎縮などの副作用があり患者様の負担の大きい手術といえます。3 ~ 4 カ所の小さな操作孔から内視鏡や手術器具を挿入して実施する鏡視下手術は開放手術と比べて低侵襲で、からだの奥でもカメラにより拡大視野で手術をていねい、安全に行うことができます。皮膚や筋肉を切開せずに目的とする臓器の手術ができれば、患者様の負担は格段に少なくなります。また、術後の回復が早く、入院期間が短縮されるというメリットがあります。東原英二医師(現杏林大学教授)は、当時外科で初めて胆嚢摘除が可能になってすぐにこの技術を泌尿器科への応用を考えました。最初の段階として実験用ブタで研究を行い、堀江教授も研究チームに参加しています。アメリカで腹腔鏡手術の講習会が開かれ、堀江教授も東大から派遣参加し、その後の第1 回腹腔鏡外科研究会での手技講習会でトレーナーを務めています。しかし腹腔鏡手術開発の道のりはかならずしも平坦ではありませんでした。後腹膜の手術では静脈性の細かい出血が多く、電気メスの処理では不十分で止血クリップを多
用する必要があり手術に時間がかかるのが難点でした。当時は小さい副腎摘除術でも6 - 7 時間かかることはざらでした。止血をコントロールし手術を安全にかつ手術時間を短縮することを目的とした腹腔鏡手術のための手術法の開発もすすみ、これらの機器を積極的に取り入れています。

根治的腎摘除術の症例数
このような状況はエベレストのような高山登山が、適切なルートの開発と軽量で優れた装備の登場でより安全にできるようになったこととよく似ています。帝京大学病院ではオリンパス社製の手術中に曇りがなく画期的な視野が得られる内視鏡システムを導入し、安全性を高めた手術を行っています。帝京大学泌尿器科では、2003 年度より鏡視下手術を導入し、癌の大きさなどにより術式の選択は違ってきますが、現在、腎癌患者様の約6 割は鏡視下手術を行っています。




