男性の不妊症
不妊症とは
WHO(世界保健機関)の基準では、通常の避妊をしない性行為を行っているカップルで2年以上妊娠のないカップルを不妊カップルとして治療対象としています。不妊症の原因は、男性側にのみ原因のあるもの・女性側にのみ原因のあるもの・男性女性両方に原因のあるものがそれぞれ全体の1/3ずつを占めていると考えられています。当科では主に男性に原因のある不妊症カップルを対象にした診療を行っています。しかし、女性の原因に関しては当病院の産婦人科や東京都内の殆どの体外受精実施施設と連携して不妊症カップルに対する医療サービスの提供に努めております。
診療の流れ
- 問診
不妊症としての治療歴や、不妊症と関連した他科疾患の有無、性機能についてお尋ねする診療の第一歩になるステップです。プライバシーを考慮した専用のアンケート用紙にご記入いただきます。 - 精液検査
男性不妊の治療は精液検査の結果により大きく異なる方法を行います。
1)射精液が存在しない場合
勃起障害・射精障害・逆行性射精
2)射精液が存在する場合
無精子症・乏精子症・精子無力症・奇形精子症 - 内分泌検査
精巣の精子形成は脳下垂体から分泌されるホルモンによる調節を受けています。
LH(leuteinization hormone;黄体化ホルモン)
FSH(follicle stimulating hormone;卵胞刺激ホルモン)
PRL(prolactin:乳汁分泌ホルモン)
T(testosterone:男性ホルモン)
E2(estradiol:女性ホルモン)の5種類の血中濃度を測定します。 - 染色体分析
遺伝情報の詰まっている染色体の数に異常がある場合は、精子形成がおこりにくいことが判っています。このため、当科では来院された全ての男性不妊の患者様を対象に染色体分析を行っております。 - 視触診
外性器の形態異常(陰茎が極端に短い・完全包茎・勃起時に陰茎が曲がってしまう)
精索静脈瘤の有無を中心に診察します。
治療の流れ
- 射精液が存在しない場合
- 勃起障害
内分泌検査の結果を参考にしながら、バイアグラ使用の適応を検討します。 - 射精障害
バイアグラを用いても膣内射精が可能にならない場合には、当科独自のASAP massageにより精子を回収して顕微受精を行います。ASAP massageでも精子が回収できなければ、精巣精子抽出術(TESE: testicular sperm extraction)を行います。 - 逆行性射精
薬物療法を行い、順行性射精が得られなければASAP massageないしはTESEにより精子を回収します。
- 勃起障害
- 射精液が存在する場合
- 無精子症
精子の通り道が詰まっていることによる無精子症(閉塞性無精子症)に対しては、手術用顕微鏡下でのせ精路再建術を行います。
精子の通り道が詰まっていない(非閉塞性無精子症)に対しては、手術用顕微鏡下での精子抽出術(microdissection TESE)を行います。現在、当科では国内最多症例数にmicrodissection TESEを行っております医師が手術を担当いたします。週末を利用した2泊3日で可能です。 - 乏精子症・精子無力症・奇形精子症
お薬による治療を中心に行います。
非内分泌療法 ビタミンB12、ビタミンE、カリクレイン製剤、コエンザイムQ10、漢方薬などを組み合わせて用います。
脳下垂体ホルモンの低下していることが原因になっている患者様の場合は、ホルモンの補充療法を行なっています。
精索静脈瘤のある患者様の場合は、積極的に手術療法を行っています。この手術も顕微鏡下に行うもので、週末を利用した2泊3日で可能です。
- 無精子症

岡田 弘