ED (勃起障害)
EDとは
勃起障害 (Erectile Dysfunction、以下ED)とは、陰茎が勃起しないというだけではなく、性交を行うのに十分なだけの勃起がおきない、または十分に勃起状態を維持できないため、満足な性交が行えない状態と定義されています。
EDは原因の性質により、器質性
と機能性
に分類され、治療法も異なります。日本における有病率は、40代が20%、50代が40%、60代が60%と高く、ED患者は1000万人近いと考えられています。(図1)
器質性EDとは臓器・器官の性質(器質)に問題がある場合のEDを指します。具体的には陰茎への血液の流れに不具合がある血管性、神経伝達に問題がある神経性、ホルモン分泌に異常がある内分泌性と分類され、糖尿病、高血圧、高脂血症を原因疾患とするがことが多くあります。
| 血管性 | 動脈硬化による陰茎への血流障害 |
|---|---|
| 神経性 | 脳脊髄、末梢神経疾患、外傷に伴うED。糖尿病による末梢神経障害によるものが多い。直腸癌や前立腺癌など骨盤手術後のEDも含まれます。 |
| 内分泌性 | 精巣機能不全による男性ホルモン(テストステロン)低値、下垂体、副腎、甲状腺の機能異常によるもの。 |
機能性疾患とは器質性の原因がない疾患のことです。機能に問題があるのというより、機能を果たさないので問題があると言えます。機能性EDのほとんどが心因性や精神病性の疾患であり、心因性EDには思春期以降勃起障害で性行為が不能であった場合と、ある時期から不能になった場合とに傾向が分かれます。前者の原因としては母親との関係の異常、性行為への嫌悪感などがあり、後者では性行為経験が何らかの心の傷となっていることが多くあります。また過労やストレスにより器質的原因がはっきりしない場合や、長期間の薬剤の服用が原因となることもあります。
EDのリスクファクターを表に整理しました。
| EDのリスクファクター | 糖尿病 |
|---|---|
| 高血圧 | |
| 心臓病 | |
| 高脂血症 | |
| 腎不全 | |
| 骨盤内手術後 | |
| 脊髄疾患 | |
| うつ病 | |
| 薬剤(降圧剤、抗精神剤、血糖降下剤) | |
| 喫煙 | |
| 飲酒 | |
| ストレス |
診断
診断ではこれまでの病歴や健康状態などを充分に聞き取ることが重要になります。ここで性欲、勃起、性交、射精の状態を見極めます。この際、 ED問診票(International Index of Erectile Function:IIEF5)が広く用いられており合計が21点以上の場合はEDの可能性が高くなります。
その後、血液検査、内分泌検査などで体内に問題がないかをか調べます。血液検査では一般的な検査に加え糖尿病などEDを伴うリスクとなる疾患の有無を調べ、内分泌検査ではLH, FSH, プロラクチン、エストラジオール、テストステロンなどのホルモン分泌について測定します。また、常用薬剤の影響などにも注意を払います。
身体に異常がなければ、睡眠時に無意識で勃起が起こります。この特徴を利用し器質性 EDと心因性EDの鑑別を行います。これを夜間陰茎勃起測定と言います。
器質的障害がなければ睡眠時に性的刺激を伴わない勃起が3-6回起こるため、陰茎の周囲長や陰茎硬度を睡眠中に測定します。
血管障害については、血管を拡張させる作用のある物質(プロスタグランジンE1)を陰茎海綿体に注射し勃起の程度を確認します。同時に、カラードップラー超音波検査によって血流の状態も見極めます。
治療
心因性ではカウンセリング、器質性では原因疾患の治療により改善が見られることがあります。
また、「クエン酸シルフィナデル(商品名:バイアグラ)」の使用が機能性、器質性ともに有効率が高く、副作用が少ないために多く用いられます。約70%の場合に有効性が見られる最も有効な治療法ですが、薬剤の効果を間違って認識している方も多いようなので、正しい理解が必要でしょう。
「シルフィナデル」は勃起のメカニズムに直接働きかけることで勃起を起こしやすくする薬剤で、精力剤のようなものではありません。
平常時の陰茎は陰茎海綿体平滑筋により一定量の血流が流れるようになっています。勃起時にはこの平滑筋がゆるみ海綿体に血液が多量に流れ、一定期間とどまることで陰茎が大きく堅くなります。「シルフィナデル」とは平滑筋をゆるめる物質cGMPの分解酵素PDE type5を抑制する薬剤なのです。分解酵素PDE type5が減ることでcGMPが増加、海綿体へ血液が流れやすくなり勃起を促します。副作用が少ないと紹介しましたが、心臓病などへの副作用が心配されるため専門医による慎重な評価と投与が必要になります。
他の方法としてはバキュームディバイス、プロスタグランジン海綿体注射、男性ホルモン補充、血管吻合手術、陰茎プロステーシスなどがあります。




